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マイコプラズマ感染症
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マイコプラズマは細胞壁を欠く細菌であり球形(125~250nm)から繊維状(150μm)と多様な形態を示し、細胞外で自己増殖可能な最小の細菌である。その増殖にはコレステロール長鎖脂肪酸を要求する。ウイルスと異なり、人工の無細胞培地で増殖できる最小の病原微生物。初期は風邪と区別がつきにくく、通常、咳など気管支炎症状を示すことが多いが、比較的若い人に多い肺炎の起炎菌として有名。感染力は強く、マイコプラズマ肺炎患者の気道分泌物中にマイコプラズマが咳によって飛沫となって経気道感染をおこす。1~2 m程度の距離で人から人に飛沫感染するために、学校や職場などの狭い範囲で流行がみられまる。肺炎が流行する季節は秋。マイコプラズマは気管線毛上皮細胞に付着して増殖し、下気道粘膜上皮を破壊する。普通の細菌と異なり、細胞壁を持たず、 3層の限界膜をもっており、ペニシリン系やセフェム系などの抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では五類感染症に指定されている。肺呼吸器系の症状のみでなく、発疹、筋肉痛、関節痛、髄膜炎などの全身症状がある。また、まれではあるが、喘息・神経疾患・関節リウマチ症状への移行が知られている。

マイコプラズマ肺炎

肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)による非定型肺炎(異型肺炎)。マイコプラズマ肺炎は小児・若年成人に多発。乳幼児にも感染するが、肺炎になることは少なく、風邪や上気道炎で終わることが多い。5歳以上になると肺炎症状がでてきます。感染後に無症状の保菌状態が続く。感染後、免疫は長続きしない。したがって、また感染する。しかし、肺炎を繰り返すことはあまりないよう。

【潜伏期】

潜伏期は2~3週間程度。潜伏期とは体の中にマイコプラズマが侵入してから症状が出てくるまでの期間。マイコプラズマ感染症の人と接触してもすぐに症状が出てくるのではなく、2~3週間の間をおいて症状が出てくる。

【症状】

発熱で発症し、1~2日遅れて咳が出てきて、だんだん強まっていく、というのが典型的な経過。マイコプラズマ肺炎の症状としては,初期症状は普通の風邪と変わりないことが多く、咽頭痛、全身倦怠、筋肉痛、発熱が最も多い。その後に、自制できないほどの頑固な咳が続くことが多いのが特徴で。 咳は最初は空咳、だんだん痰がからんでくる。痰は少ないかあっても膿性ではない。感染を受けた人すべてに発症するわけではなく、約3~10%に発症するとされている。 

 
【マイコプラズマ肺炎を疑う所見】

①家族内にマイコプラズマ感染症の人がいる場合

②保育園や幼稚園でマイコプラズマ感染症が流行している場合

③長期間せきが続く場合

④喘息児が気管支拡張薬などの治療にもかかわらず喘鳴が長引いたり、発作を繰り返す場合

⑤セフェム系抗生物質を使用しても発熱や咳嗽がなかなか治らない場合



【マイコプラズマ肺炎の診断】

診断は、抗マイコプラズマ抗体の上昇で確定診断になる。抗マイコプラズマ抗体の特異性が低いためより特異性の高い診断法が望まれている。
胸部X線写真は区域性の所見を示さず、すりガラス状の間質性陰影を見ることが多い。飛沫感染するので家庭、学校、職場で流行しますので、流行が診断の助けにもなる。


【検査】

検査は、血液検査では寒冷凝集反応や抗マイコプラズマ抗体の上昇を見る。

肺炎があるかどうかは胸部XPで確かめる。胸部XPの陰影で(非定型肺炎)、マイコプラズマ肺炎かどうかの予測はつくが、中にはウイルス感染でも同じような像を呈することがある。白血球数は正常のことが多いが、中には10000~15000程度の軽度の上昇を示すこともある。ルーチン検査の喀痰培養検査でも検出できないので参考にならない。CRPは軽度上昇を示すことが多いが、陰性のこともある。

【合併症】

喘息の既往のある子供は喘息発作が生じたり悪化したりするので注意が必要。高熱のためにけいれんが誘発されることもある(熱性けいれん)。発疹が出現すること、中耳炎が合併することもある。肺炎マイコプラズマは心筋炎・心外膜炎、中耳炎、鼓膜炎、多形紅斑(かなり多い)、ステーブン・ジョンソン症候群、髄膜炎、脳炎、多発神経炎(ギラン・バレー症候群のページにリンク)、寒冷凝集素症、血小板減少症など多彩な病変を起こすこともある。

【治療】

マイコプラズマが細胞壁を持たないのでβ-ラクタム系やアミノグリコシド系等の細胞壁合成阻害薬は無効である。マクロライド系、テトラサイクリン系、ケトライド系を第一選択薬とする。 マクロライド系の抗生物質、エシノール、クラリス、ジスロマックなどから選択し。最近、耐性菌の出現が問題となってきている。

マイコプラズマには通常外来で処方されることの多いセフェム系抗生物質が効かない。逆にマイコプラズマに効果のあるマクロライド系抗生物質は細菌に対する効きが弱い。そのために、症状を起こしている病原体がマイコプラズマなのか、細菌なのか、ウイルスなのかはお子さんの治療を行っていく上で問題となる。
 

【予防】

患者の鼻やのどからの分泌物に触れたり、飛沫を吸い込だりすることによる感染がありますので、手洗いやうがいも有効。また、患者との濃厚な接触を避けることも大事。発病前1週間~発病後10日程度が、感染力がある期間といわれている。登校登園については急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能。

【経過】

一般に予後は良好。しかし、咳嗽が長引くことが多く、1ヶ月以上続くことも珍しくありませんし、レントゲンの肺炎像が改善するのに1~2ヶ月かかることもあります。一度かかっても再度発病することがあり、一生免疫ができるとは限らない。しかし、咳嗽が長引くことが多く、1ヶ月以上続くことも珍しくなく、レントゲンの肺炎像が改善するのに1~2ヶ月かかることもある。一度かかっても再度発病することがあり、一生免疫ができるとは限らない。

経過中に発熱が続き、嘔吐、頭痛等がみられる場合は髄膜炎を合併を考える。他に中耳炎、尿道炎、肝炎などが報告されている。成人より小児に合併症の頻度が多いとされている。 



肺炎の10~20%程度がマイコプラズマが原因によって起こるといわれている、5~14歳の年齢に多いといわれているが、成人にも乳幼児にもマイコプラズマは感染する。家族の誰かがマイコプラズマに感染すると家族中にうつってしまう。

小児の肺炎では、経験的治療は大きく異なってくる。その違いは肺炎の起炎菌の違いによるものである。新生児を除く乳幼児では、肺炎の3大起炎菌といえるのはインフルエンザ桿菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスである。成人と異なりクレブシエラ属や緑膿菌は少ないため、第3世代セフェムよりも抗菌スペクトラムの狭いペニシリン系抗生物質を選択するのが一般的。

学童以上の年齢では肺炎マイコプラズマによる肺炎が多くなる。細菌性肺炎との鑑別はX線像ではまず不可能であり、血液所見(好中球増加の有無、C反応性蛋白上昇の有無など)や全身状態、気道症状の程度などが参考となる。マイコプラズマにはβラクタム系の抗菌薬が無効であるが、テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)やニューキノロン系抗菌薬は副作用の問題で小児には投与しにくい、あるいはできないため、マクロライド系抗生物質を選択する。

基礎疾患や障害のある患児では、その疾患によって肺炎の起炎菌に特徴がある。また、過去の細菌検査の結果も起炎菌推定の助けになる。いずれの場合にも、喀痰培養の結果や(マイコプラズマの場合)血清診断の結果がでれば、それにあわせて最適の抗菌薬に変更していくことが必要。



肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )は、急性肺炎の主要な病原細菌である以外に、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪に関連する慢性感染が指摘されている。

従来から、急性肺炎の病原診断の際、血清抗体の上昇は、特異性が高く、M. pneumoniae 診断に頻用されてきた。最近のアジアの多施設調査による報告でも、1,374人のペア血清の得られた市中肺炎において、M. pneumoniae は12%の肺炎に関与したとの数値が示されている。一方、M. pneumoniae による慢性感染症や不顕性感染症の実態は、その診断法を含め、いまだ不明な点が多い。M. pneumoniae は気道上皮細胞における表層感染症を起こすと考えられているが、喘息やCOPDの患者においては、慢性感染を起こす病原細菌として、細胞内寄生体の肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae )と合わせ論じられることが多い。どちらの病原細菌も、慢性感染に関しては、不明な点が多い。すでに診断法として確立したM. pneumoniae やC. pneumoniae のPCR法であるが、気道検体でM. pneumoniae 、C. pneumoniae 抗原が陽性と判定されても、活動的な病原因子が存在しているのか、断片にすぎないのかは不明であり、特に、気道生検の材料を用いた成績では、PCR法による判定と、培養法、血清抗体の検査法との相関がみられない現状がある。